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なべさんのやさしいばね講座「たかがばね、されどばね」

第5講「弾性限」

ばね材料の弾性限はどのようにして求めるのであろうか?鋼線の例で勉強してみよう。
鋼線の引張試験は、鋼線をある一定の間隔(通常 100 か 200 ㎜)でマークし、その外側を固定し引きちぎれるまでの力(荷重)と伸びを測定する試験である。

図6 φ5.0鋼線の引張試験の例図6はこのような試験の例で、荷重と伸びの関係を示すものである。
図で荷重の起点が0でないのは、荷重0点と伸び0点を合致させることが困難なためで、通常はチャッキング(固定)が安定する最小荷重(図では P’=200kgf)を与え、その点を伸び0として試験を始めます。
このようにすると始めのうちは荷重と伸びは直線的な比例関係を示しますが、図で荷重3000kgfになるとこの関係は破れ、それ以上では荷重がややねた曲線になります。
すなわちこれは、直線部(P’‐P間)ではP点まで荷重をかけても、荷重を200kgfに戻すと伸びは0になるが、曲線部のQ点やR点まで荷重をかけると伸びは0に戻らないことを示している。
P’‐Q’やP’‐R’で示される伸び量は、マーク間の長さの増加量で、この様な変化量を永久伸びという。

日本では、JISで0.2%耐力は規定されているが、弾制限の規定がありません。
しかし、ないと不便なこともあるので、永久伸びが0.03%発生する引張応力(図では荷重Q/断面積 ≒ 153kgf/mm2)と決めている場合が多い。
(参考までに0.2%耐力点は 荷重R/断面積≒163kgf/mm2)

図6と同じような試験をねじれ試験で行うこともあるが、このような時は”ねじれの弾性限”、あるいは”ねじれ耐力”という。
ばねで許容できる応力の限界は、本来、直線部の最大応力(P点)であるが、P点を正確に求めることは非常に困難でなので、引張強さがわかれば最大応力と一定の比例関係があるので、引張強さから許容応力を算出しているのが実情です。
引張とねじれの関係も同じです。下にその関係式を示しておきます。

結論として、ばねは弾性限以下の応力で使用しないと、へたりや変形が発生します。

 


引張とねじれの関係について

JIS B 2704(圧縮・引張コイルばね設計基準)では次のようにしています。 ピアノ線・硬鋼線の場合、引張強さ(σB)の80%までが通常のばねに必要な引張の弾性域とし、引張応力とせん弾応力(ねじれ応力)の比を0.6とすれば、許容ねじり応力(τal)は

τal=0.6×σal
=0.6×(0.8×σB)
=0.48×σB ≒ 0.5×σB
すなわち引張強さ(σB)の約50%となる。

またオイルテンパー線はσB の約55%、ステンレス線はσB の約45%となり、鋼合金線はσB の約40%となる。

 

補足 図6の説明

引張強さ (kgf/mm2) : 引張試験における最大荷重を原断面積で除した値。
(図における最大荷重はR点矢印の先になります)
弾制限 (kgf/mm2) : 引張試験における永久伸びが0.03%(又は0.05%)発生する荷重を原断面積で除した値。
原断面積 (mm2) : 図6の場合、φ5鋼線であるからπ52/4=19.625 mm2
耐力 (kgf/mm2) : 永久伸びが0.2%発生する引張応力。図6ではR点の応力。
伸び (%) : 標点距離(L=100;200)の伸び量。
L0:元の長さ  L1:荷重時の長さ
伸び=(L1-L0)/L0×100 (%)
比例限 (kgf/mm2) : 永久変形ゼロの最大応力。図6ではP点の応力。
縦弾性係数 (kgf/mm2) : ヤング係数ともいい、Eであらわす。図6のP点(比例限)の応力を横軸の伸びで除した値。すなわち立ち上がり部の傾斜を示すタンジェント。
横弾性係数 (kgf/㎜2) : Gであらわす。捩じり試験におけるEと同じ表現。